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非・バランス

非・バランス

2001年6月2日(土)公開
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Introduction

人生には必ず忘れられない《出逢い》がある  人は生きてゆく限り、誰かと関わりあわなければいられません。誰にでも忘れられない出逢いがあります。そして、その先には必ず二つの選択が待ち受けています。―――人生を共に歩むか、あるいは別々の道を往くか。それが別れを選ぶとしても、その出逢いは別れの痛みとともにそれぞれの心に永遠に刻み付けられていきます。  こうした運命的な出逢いは、映画の中でもたびたび描かれてきました。とりわけ“青春映画”と呼ばれるジャンルでは、心に残る名作が数多く誕生しています。フランコ・ゼフィレッリ監督の『ロミオとジュリエット』『愛人/ラ・マン』『レオン』、そして映画史上最大のヒット作となった『タイタニック』。いつの時代でも、思春期を生きる者たちにとって、出逢いの印象は強烈で、年月を経ても風化することがありません。こうした物語のヒロインやヒーローの姿に、観客もまた自らの姿を同化させ、時にはノスタルジックな想いでスクリーンを見つめてきました。  『非・バランス』は、13歳の少女・松本チアキと不思議なヒト“菊ちゃん”のひと夏の物語です。身の回りに友達はおろか、話す相手さえ作ろうとしないチアキは、ふとしたきっかけで“菊ちゃん”と出逢います。チアキは、はるかに年上で、ちょっと変わった “菊ちゃん”と友情ともいえる“微妙で心地よい瞬間〈とき〉”を一緒に過ごします。過去に背負った心の傷が、二人の心を次第に引き寄せあっていきます。そして、互いの痛みを知った時、二人は心が真に通じ合ったことに気づき、過去から抜け出して未来に向かう決心をします。チアキは、それまでの深い心の闇から抜け出すために、傷つきながらも大きく飛び立つためのジャンプ台に立つことになります。そして、また“菊ちゃん”も新たな人生へと踏み出していきます……。  人と人との心の繋がり、コミュニケーションの大切さを知ることで、ヒロインは成長し、それゆえの痛みも知ります。そして彼女は、痛みを乗り越え、しなやかさと逞しさを併せ持って、鮮やかに大人へのステップを踏み出していくのです。同時に、中年期に差し掛かった“菊ちゃん”の人生もまた停滞していた日常から大きく揺り動かされていきます。少女の純粋さ、ひたむきさが、それをみつめるものにもたらす人生への選択と勇気。この物語は、あまねく世代の心に深く焼き付き、不朽の感動を与えることでしょう。 だれもが心の底から求めるもの――親友  人が生きてゆく上で、必ず欠かせないものの一つが「友人」の存在です。しかし、携帯電話やパソコンなという新しいコミュニケーションツールの普及した現代では、“チャット”や“メル友”に代表される《非接触の友人》という新たな人間関係が生まれてきました。また、ティーン・エイジャーの間では、同じエリア、同じファッションを共有するだけで簡単に“友だち”と呼べる存在が増えて行く一方、その関係は表面的なものに終始し、“本当に心から話せる友だち”がいないこともまた事実です。女子高生を対象にした調査では、彼女たちの悩みの第一位は《親友がいない》ということだそうです。そして、それは世代に拘らず共通した悩みでもあるのです。  “バディ・ピクチャー”に分類される映画には、邦洋を問わず数々の名作があります。これらの作品の主人公たちが共有している“孤独の呼吸”こそが、誰もが《親友》と呼べる相手に求めるものではないでしょうか。  『非・バランス』の主人公の二人もまた、“孤独の呼吸”を感じ合うことで、かけがえのない《親友》を見つけてゆきます。戸惑い、苦しみながらも大切なものに気付いていく主人公たちの姿に、観客もまたかつての自分や今を生きる自分の断片を発見して、せつなさや温もりと共に共感を呼ぶことでしょう。  それは同時にヒロイン・チアキが、《等身大のヒロイン》=《全ティーン・エイジャーの親友》となり、“菊ちゃん”が《心優しき相談相手》となるということです。観客にとって自分たちの「悩み」や「苦しみ」「喜び」を共有できるスクリーンのニュー・ヒロインとヒーロー(?)の誕生となります。 現代のティーン・エイジャーの新たなるバイブル  原作である「非・バランス」は、児童文学賞の中でも最も歴史の古い講談社児童文学新人賞の1996年度受賞作品です。広島大学教育学部で心理学を学んだ著者の魚住直子氏は、作中に学校の抱える様々な問題をシビアに取り込みながらも、読後感の爽やかなストーリーを綴り、暖かな感動を呼びました。この物語は、児童文学というジャンルにも関わらず、「本の雑誌」が選ぶ“90年代の名著ベスト100”(99年10月号)で、邦洋の名著に混じって第82位にランキングされました。  少年・少女たちがその生活時間の大半を過ごす場所――学校についての問題は、彼らにとっていつでも最大の関心事です。この物語は、大人と子供の境目である中・高生たちの本音を反映させ、微妙に揺れ動く様を鮮やかにスクリーンに映し出してゆきます。10代の若者が抱く心のゆらめきを同世代感覚で描いたこの映画は、学校という社会で生きる彼らに勇気と元気を与えてくれる活性剤でもあるのです。  そして、現代の教育の基盤を何年も前から揺さぶっている「いじめ」の問題もこの映画にはモチーフの一つとして盛り込まれています。小学生のときに「いじめ」にあってトラウマをかかえたヒロインが、自らそれを乗り越えて行く姿は、悩めるティーン・エイジャーやその親たちへもひとつの解決のあり方を投げかけるでしょう。 新たなヒロイン・新たなキャスト・新たなスタッフで 新しい映画を  その13歳のヒロイン・松本チアキ役には1000人を超えるオーディションの中から、現役中学生の新人・派谷恵美(はたちや・めぐみ)が選ばれました。この作品がスクリーン・デビューとなる彼女の新鮮な魅力と瑞々しい感性は、日本映画界に突如として現れたミレニアムのミューズなのです。170cmの長身に繊細さとたおやかさが同居したその個性は新たな時代のヒロインの誕生を予感させます。  そしてチアキの相手役・桂川菊には小日向文世。類い稀な演技力と表現力で数多くのTVや映画での出演歴を誇りますが、今回初めて主演に挑みます。バイプレイヤーから主役へステップアップすることの多い昨今、その真打登場となります。  さらに、チアキの同級生・ミズエ役にはこれも14歳の新人、はたのゆうを、小学校時代の同級生・ユカリ役には一般参加の中村桃花をそれぞれオーディションで選びました。チアキ役の派谷を含め、全くタイプの違ったこの3人、初出演となるこの映画でどんな魅力を見せてくれるか注目されます。  これらのメインキャストを支えるキャストはベテラン・個性派が勢揃いしました。まず、チアキの母親役に今や日本映画界を代表する女優となった原田美枝子。菊の昔の知り合い・マサヨシに夢の遊眠社出身でTVドラマなどでも活躍中の羽場裕一。そしてミュージシャンとしても活躍中の柏原収史。さらに強烈な個性で数多くの出演暦を誇り、『蜂祭りの島』で初主演を務めた土屋久美子、テレンス・マリック監督の『シン・レッド・ライン』への出演など国際的にも活躍する水上竜士、さらには文学座出身の名優梅沢昌代らが脇を固めます。  監督には冨樫森。相米慎二・井筒和幸・中原俊・平山秀幸らを支えた名助監督の長編デビュー作となります。オムニバス映画『かわいいひと』の一篇で見せた情感溢れる演出力とストーリーテリングの才はこの『非・バランス』を必ず見る人の心に残る名編に仕上げてくれることでしょう。  脚本は第2回PFFのスカラシップを最年少で受賞し、『冬の河童』『メロデ』などのインディーズ作品の名手として知られる風間志織があたり、初めて他の監督のために脚本を担当します。  そして、撮影は『愛を乞うひと』で数々の映画賞を受賞した他、「学校の怪談」シリーズや『ジュブナイル』など若手No.1の柴崎幸三が担当、ヴィヴィッドに瞬間を切り取ってゆきます。照明は柴崎カメラマンの数多くの作品で照明部チーフを務めた尾下栄治が、この作品で技師としてデビューします。美術には『ポルノスター』『ちんちろまい』などで独特の世界を築いた三浦伸一。録音は『草の上の仕事』をはじめとする篠原哲雄監督作品で技師を務める田中靖志。編集は『愛を乞うひと』『金融腐食列島-呪縛-』で2年連続日本アカデミーの最優秀編集賞を受賞した川島章正。さらに音楽は『KAMIKAZE TAXI』『金融腐食列島-呪縛-』『ユキエ』などの川崎真弘が担当。若手・実力派のスタッフが集まり冨樫監督のデビューを強力にサポートします。

Story

 これはとある地方都市に住む少女に起こった、あったかくて、せつないひと夏のお話……。  その少女の名前は、松本チアキ。私立の女子校に通うホラー映画が大好きな中学二年生の女の子だ。中学に進学するとき、彼女は自分でルールを作った。  一. 友達を作らない  二. クールに生きていく  だからとにかく、学校で彼女は孤立している。必要最低限のこと以外は、一言も口にしない〈絶対孤立状態〉だ。だけど全然淋しくなんかない。それが彼女の選択した生き延びるための作戦なんだから。  そんなハードボイルドな毎日を送るチアキにも、ウィーク・ポイントはある。小学校のころ、親友のユカリからイジメにあったことだ。でも、その時だって彼女は不登校などにならなかった。自分の周りに壁を作ることで、タフに生きてきたのだ。 それから、今年で3度目の夏がやって来た。  夏休みを目前に控えたある日、チアキはふとしたきっかけでオカマの菊ちゃんと出会った。チアキにとって年齢や性別を超越しているような菊ちゃんは、まるで宇宙人のような存在だ。だからこそ、チアキはそんな菊ちゃんに対してだけは、思っていることを口にできた。菊ちゃんと映画に行く、菊ちゃんの家に行って一緒に食事をする、菊ちゃんやその仲間たちと海に遊びに行く、そして菊ちゃんの歌を聴いて、胸に込み上げてくるどうしようもない哀しみやせつなさも知った。そんな日々が、頑なだったチアキの心を少しずつ解きほぐしていった。  菊ちゃんとの出会いが、チアキの決めた二つのルールにも大きな変化を及ぼしはじめていた。過去の自分と同じように、いじめにあっているクラスメイト・ミズエの心の痛みにも気付いてあげることが出来た。  その頃、菊ちゃんの身にも事件が起こり始めていた。昔の恋人の借金の連帯保証人となっているため、ギャングのような取立屋コンビが菊ちゃんの周りに現れるようになっていたのだ。いつも笑顔とジョークでチアキを笑わせてくれた菊ちゃんの悲しそうな顔。  チアキは今や大切な《親友》になった菊ちゃんの笑顔を取り戻すために、この夏最大の作戦に踏み切るのだった…。

Credit

監督:冨樫森 原作:魚住直子「非・バランス」 製作:藤峰貞利(古澤利夫) プロデューサー:木村典代 脚本:風間志織 撮影:柴崎幸三 照明:尾下栄治 美術:三浦伸一 録音:田中靖志 編集:川島章正 出演:派谷恵美、小日向文世、はたのゆう、中村桃花、原田美枝子、羽場裕一、柏原収史、土屋久美子、水上竜士、梅沢昌代、とまと 企画:サンダンス・カンパニー 配給:メディアボックス / 日本ビクター <受賞リスト/2001年度> ■ヨコハマ映画祭 新人監督賞(冨樫森)・新人賞(派谷恵美)・日本映画ベストテン第10位 ■日本映画プロフェッショナル大賞 監督賞(冨樫森)・日本映画ベストテン第7位 受賞 第13回東京国際映画祭コンペティション公式参加作品

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