
“どないしたら、このイライラはおさまるんや!” クールさを装っても生まれついての熱い血潮と燃える野心は流血の波紋を呼び、青春は悲しい色を帯びてゆく……エリ-ト銀行マンから極道稼業の秘蔵っ子(サラブレッド)が動き出した時、男と男の〈友情〉がきしみ、親と子の〈情〉が涙し、男と女の〈愛〉がゆらめく。 いまもっとも刺激的で面白く最尖端を走るビックタウン=大阪を舞台に、ヤバイ稼業の男ども、それに関わる女たちがビジネスと恋と暴力に体を張り、ユーモラスでエネルギッシュにスクリーンに登場した。それぞれの〈青春像〉がそれぞれの〈運命(さだめ)〉と戦い、それぞれの《悲しい色やねん》として染めあげられる新しいエンターテインメントの誕生である。 ヒットメーカーたちの現代への照準…… 書きおろし原作は「紳士同盟」「極東セレナーデ」「世間知らず」のヒットメーカー・小林信彦。入念な現地取材を重ね、過去の“任侠・ヤクザ映画”ではついぞ描かれなかったリアルで人間味あるキャラクター、ユニ-クな人物を表出したのだが、脚本・監督森田芳光はそれを土台に独特の角度から極道世界に切り込み、フレッシュそのものの青春群像を創出して、個性溢れるエンターテインメント・ムービーを作りあげた。 『そろばんずく』以来実に2年ぶりの演出であるが、『家族ゲーム』や『それから』等で見せた定評ある現代感覚、シティ感覚が初のアクション大作へのトライアルで見事な結実をとげたのである。 サラブレッド、ベテランらによる豪華キャスト 血統正しき極道の秘蔵っ子・夕張トオルには仲村トオル。代表作『ビー・バップ・ハイスクール』「あぶない刑事」シリーズとはまるで違ったヒーローをスケール大きく、切れ味良く演じてまた大きな成長を見せてくれた。そのライバル・桐山には『トットチャンネル』『BU・SU』で昨年度のあらゆる新人賞をさらった高嶋政宏が豪快に演じ、またトオルの父親役には高嶋の父親。高島忠夫(映画出演は66年「狸の休日」以来なんと22年ぶり)が扮し、骨太な共演となった。さらに女性陣には『それから』『疵』の藤谷美和子がヤクザたちと対等に渡り合うスゴ腕ビジネスパートナーとして好演、また87年度全日空キャンペーンガールで、目下はCM界で活躍中の石田ゆり子がトオルの恋人役として映画デビューを飾った。 他にもOL女性層に圧倒的な人気を誇る小林薫が関西ヤクザの重鎮として登場し、そして舞台でも大活躍のベテラン・江波杏子や森尾由美、松居一代、イッセー尾形、加藤武、秋野太作ら演技派、個性派、人気者が勢揃いし、「悲しい色やね」でミリオンセラーを記録した上田正樹も出演の、華麗なオールスター映画となった。 スタッフは『マルサの女』の撮影・前田米造、『それから』の照明・矢部一男、『永遠の1/2』の録音・橋本文雄、『木村家の人々』の美術・中澤克己ら才人が集まり、音楽は『それから』の梅林茂が担当。主題歌は永遠のスタンダード「悲しい色やね」、また挿入曲の「抱いてあげる……」は横須賀昌美が唄っている。90年代の日本映画へのエポック・メイキング・ムービーといえる、大胆かつユニークなドラマ構成と人物設計がなされたMORITA最新作は、89年正月スクリーンに登場する。
夕張トオル、24歳――大阪で一大勢力を張る夕張組のひとり息子だが、稼業は継かず、大学から銀行に入って融資関係を担当するエリートであったが、妙な癖があった。救急車のサイレン音を聞くと血が騒き、追いかけ回したくなるのだ。 関西の財閥・御殿山コンツェルンのひとり娘・ミキも同じ性癖があり、ある夜、二人は救急車に導かれるように出会い、親しくなった。 そんなトオルの身辺に一大事件か起きた。父の夕張組組長・寿美雄が何を思ったか四国巡礼に出かけ、その旅先で喧嘩ザタとなって病院にかつぎこまれたのだ。しかも相手は大阪で夕張と勢力を二分する三池組系の元・ヤクザで、タダですまぬ状況になってしまった。しかし父はオヘンロに出たのは、これまでの切った張ったの極道が嫌になったからで、ささいな事件で三池とコトを構えるようになるのは本意でない、とつぶやいた。 「まかしとき、親孝行するわ」。銀行マンであるがトオルに流れる極道の血は濃い。夕張組の突出を押さえて彼はひとり三池へ走り、用意されていた鉄砲玉を叩き漬して抗争の芽をつんだ。一方、三池にもトオルと同じ考えに立ち、この機会を利用して夕張組を叩こうとする組長らを鎮め、衝突回避の根回しを企った男がいた。 トオルと高校の同級生であり、空手部で腕を競っていた桐山恵である。 こうして夕張 VS 三池“大阪戦争”の勃発は一旦回避された。友情を確認しあう二人。桐山はトオルに銀行をやめて稼業を継げと説得する。「もう切った張ったの時代やないで。組も違うライバル同士やが一緒に手を組めばいい商売出来る」。 数日前、トオルは父から巡礼に出た本心を聞いていた。父は組を解散する気でいたが、子分達の扱いに心を痛めていたのだ。父の悩みを解決する手はトオルの胸の内にあった。夕張組をそっくりそのままカジノの借金で押さえているゲーム用品製造会社に移しかえる。そしてそれを核にでっかいビジネスを目論むのだ。幸い、ミキを通して御殿山コンツェルン総裁・大介の後押しも期待出来る。トオルはついに組を受け継ぐ決意を固めた。そして父に代わり、新会社社長になる―― 彼の夢はカジノハウスをもっと現代向けにドレスアツプして量産し、大阪近くの温泉街・黒浜を日本のラスベガスにしようというものだった。だが、若返りを企り、極道稼業から実業、ビシネスへの転進を目指すトオル、夕張組の狙いは、再び実業面での勢力拡張を急ぐ三池との壮絶な確執を呼ふことになっていく。 トオルとのつき合いを牽制されていた桐山の立場も悪くなっていった。さらにトオルと桐山の間には病院で扱うヤクを三池組に横流ししている奔放な美女・堂上マコがからみ、なお微妙になる。彼女はビジネスと恋を巧みに操る天才だった。 そしてトオルの計画の全てを知った三池は勢力バランスの崩れを恐れて最期の行動に走った。桐山は何者かに襲われて傷つき、夕張組組長・寿美雄も暗殺されたのだ。トオルの怒りは頂点に達した。それでも彼は元・夕張組組員に言う。“お前らはもうカタギや。親のカタキはオレひとりで始末する。ほっといてくれや!”彼は単身三池組へ乗り込んでゆく――
監督・脚本:森田芳光 原作:小林信彦 企画:藤峰貞利(古澤利夫) プロデューサー:黒澤満 撮影:前田米造 照明:矢部一男 録音:橋本文雄 美術:中澤克己 編集:冨田功 音楽:梅林茂 出演:仲村トオル、高嶋政宏、藤谷美和子、石田ゆり子、橘ゆかり、森尾由美、秋野太作、イッセー尾形、上田正樹、、小林薫、松居一代、津村鷹志、加藤善博、阿藤海、加藤武、北村和夫、江波杏子、高島忠夫 企画:東映 / サンダンス・カンパニー 配給:東映 <受賞リスト/1988年度> ■日本映画テレビプロデューサー協会賞 エランドール新人賞(高嶋政宏) 受賞
