
和田誠映画世界の醍醐味がここに 84年『麻雀放浪記』で風格あるモノクロ画面に鮮烈な青春群像を描いて見事な監督デビューを飾った和田誠の待望の新作の登場です――“ルビイ”という仇名の突拍子もなくチャーミングなヒロインが巻き起こすおシャレでスリル満点のロマンティックな“恋の物語”……それは映画に夢があり、面白く、楽しかったハリウッド映画黄金時代をほうふつさせて、なお観客のハートをつかんで離さない(珠玉の和田誠シネマランド)からの贈り物。 脚本はアルフレッド・ヒッチコック監督がこよなく愛した短編ミステリーの名手ヘンリイ・スレッサーの原作を、主人公の男から苦いヒロインのドラマへと和田誠自ら仕立て直し、さらにユニークでとぼけた味のヒーローも生み出して愉快で洗練されたエピソードを綴ったもの。そして初のカラー作品への試みはこのドラマの内容に合わせた暖かく華やかな、いかにも“総天然色映画”と呼びたくなる色合いへの挑戦が行われました。 タイトル・口-ルの「快盗ルビイ」こと加藤留美には小泉今日子。今回は前2作『生徒諸君!』『ボクの女に手を出すな』とは全く違った大人の女としてのキャラクターへのトライアルを見事に演じきり、アクトレス・今日子の素材としての豊かさをいかんなく発揮しています。彼女の、隣の女の子のようでいてどこかの星から来た人のようでもあるユニークなイメージが、そのまま“ルビイ”のキャラクターとフィットし、スケールアップされたのです。 その“ルビイ”にキリキリ舞いさせられながらもいつの間にか惹かれてゆく愛嬌あるヒーローの純情サラリーマン・林徹には真田広之。映画界の実績と共に最近は舞台にも進出して演技の幅を広げてきました。和田誠監督とは『麻雀放浪記』に続くコンビ作ですが、ナイーブでユーモラスな三枚目に近いキャラクターに挑み、その実力の確かさを鮮やかにスクリーンに表出したのです。 そしてこの二人にからんで徹の母親役の水野久美ほかベテラン、個性派、演技派と意表をつく“お楽しみゲスト”が脇をかためていますが、その顔ぶれは映画を見ての“お楽しみ”――またスタッフも『ウホッホ探検隊』『上海バンスキング』の撮影・丸池納、『光る女』の照明・熊谷秀夫、『それから』『永遠の1/2』の録音・橋本文雄、『家族ゲーム』『木村家の人々』の美術・中澤克己、『私をスキーに連れてって』『バカヤロー!』の編集・冨田功ら、力量と意欲溢れる才人が勢揃いし、見事なチームワークのもとで和田誠映画の醍醐味をたっぷり盛り込むことに成功しています。 さらに話題を呼んでいるのは音楽面です。和田誠作詞の主題歌「快盗ルビイ」は、「風立ちぬ」や「熟き心に」等のヒットメーカー・大瀧詠一が作曲、そして小泉今日子が歌う素敵なナンバーとなり、また和田誠作詞・作曲による挿入歌「たとえばフォーエバー」も小泉今日子、真田広之がデュエットする豪華な作品になりました。音楽は「さらばモスクワ愚連隊」ほか手掛けた映画音楽200本余というベテラン八木正生が担当、クラシックからスタンダード、ポップスとバラエティに富んだ楽曲も使われています。 底抜けに明るくて面白く、観終わって必ずハッピーになれる映画『快盗ルビイ』はまさしくそんな秋の話題作です。
夏も過ぎたある日の朝、彼女は突然陽の光の中から彼の前に現れた―― 彼、林徹はダイレクト・メール等を扱う会社に勤めるサラリーマン。東京郊外のマンションで母と二人きりの生活を送っている。そして通勤に出ようとした徹が上を向いた時、彼女が声をかけたのだ。彼女は徹の部屋の真上に引っ越してきたばかりだった。小柄だが若くて髪の長い美人。引っ越しのドサクサにまぎれて徹が彼女の水着写真をポケットに入れてしまったことから、彼の平穏だった日常は大いなる変化を招くことになってしまう。 ルビイ&徹の犯罪コンビ誕生 彼女の名前は加藤留美。仇名は“ルビイ”で職業はスタイリストだという。ところがある日、ルビイは徹にビックリするようなことを打ち明けた。なんと自分の本業は犯罪者だと言うのだ。思わず、「どんな犯罪?」と聞いてしまう徹。「さしあたって泥棒ね」「お金のため?」「そ、でもそれだけじゃないわ。よくわからないけどサムシングがあると思うの。協力して! それにあなた素質があるのよ」。 徹はあの水着写真をポケットに入れたことをルビイに見られていたのである。キッパリと宣告されて仕方なくコンビを組むハメになった徹に向って、早速彼女はある完全犯罪のプランを切り出した。良い物ばかりを扱って小銭をためこんでいそうな食料品屋を襲おうというのだ。シブシブつきあわざるをえない徹。店の親父の行動、店構え等々を観察・研究した結果、遇に一度、金をまとめて親父が銀行に持っていく時を狙うのが一番、とルビイは結論を出した。 襲撃!?に必要な自転車の練習……実は徹は自転車にほとんど乗れないのだ。通勤前の猛特訓もあったりして、決行の日は徐々に近づいてゆく。その日を前に悪夢にうなされてしまう徹。 だが、彼の心配をよそに、ちょっとした手違いはあったものの計画は成功して、狙っていた親父のバッグは〝快盗ルビイ″と徹の手に入った。しかし……バッグの中身は予想を裏切って収獲はほぼゼロ。調査や行動費用のお金を換算すると収支は赤字となってしまった。なにやらホッとしてしまう徹。だがルビイはテンでメゲないのである。 「私たちは大犯罪者よ。こんなはした金じゃプライドが許さない!」とすぐさま第2の犯罪プランを徹に打ち明けた。「今度は確実にお金のあるところを狙わなくっちゃね。確実にあるのはどこ?」「……」「銀行じゃないの」「銀行!」「そうよ。今度は銀行を襲う。計画はもう立ててあるから」。 第2第3第4の犯罪へとエスカレーション 話を聞いて思わず飛び上がってしまう徹。だがルビイは映画みたいにギャングまがいのことをしなくてもいい、もっと簡単にスマートにお金を手に入れる方法があると言う。再び始まる調査と研究の日々。徹にとってはまたまた悪夢に悩まされる毎日となった。「お前、何か悩みがあるんだったら話しておくれ」と心配した母が言うが、こんなこと話せるわけがない。そして遂に犯罪決行の日が訪れた。 「ルビイ、ぼく心臓がもたないよ」「大丈夫、一生使えるわよ」……ルビイの度胸は満点だった。しかし徹のちょっとした手違いから、銀行襲撃は徒労に終わってしまう。 でも、ルビイはあきらめなかった。「今度こそへマはやんないからね」と第3の犯行プラン=宝石屋詐欺を話し出した。 ちょうどこの頃、徹はルビイにずっとつきあっている恋人がいることを知ってしまった。逡巡する徹。「留美さんにはパートナーがいるんだろ……彼は君が犯罪者だってこと知ってるの」「知らない筈よ。言ってないから。打ち明けたのは、あなただけだったんだから」。またまたノセられてしまう徹。そして〝快盗ルビイ〟と徹のコンビは第4、そして第5の犯行へとどんどんエスカレートしてゆくのだった――。
監督・脚本:和田誠 原作:ヘンリー・スレッサー 製作:藤峰貞利(古澤利夫) アソシエイト・プロデューサー:木村典代 撮影:丸池納 美術:中澤克巳 録音:橋本文雄 照明:熊谷秀夫 編集:冨田功 音楽:八木正生 出演:小泉今日子、真田広之、水野久美、加藤和夫、伊佐山ひろ子、天本英世、高見恭子、吉田日出子、斎藤晴彦、奥村公延、岡田眞澄、木の実ナナ、陣内孝則 企画:サンダンス・カンパニー 配給:東宝 <受賞リスト/1988年度> ■報知映画賞 主演男優賞(真田広之) ■日刊スポーツ映画大賞 助演男優賞(真田広之) ■毎日映画コンクール 女優主演賞(小泉今日子)・日本映画ファン賞 ■日本映画ペンクラブ賞 第10位(日本映画部門) ■ヨコハマ映画祭 主演男優賞(真田広之)・主演女優賞(小泉今日子)・日本映画ベストテン第6位 ■キネマ旬報賞 主演男優賞(真田広之)・読者選出日本映画ベスト・テン第2位・日本映画ベスト・テン第10位 ■ブルーリボン賞 最優監督賞(和田誠)・邦画ベストテン ■日本アカデミー賞 優秀編集賞(冨田功) ■くまもと映画祭 日本映画男優賞(真田広之) ■読売新聞 日本映画ファイブベスト ■たかさき映画祭 主演女優賞(小泉今日子) ■ロードショー・シネマ大賞 邦画ベスト・スター賞(小泉今日子) 以上18の賞を受賞
