WORKS

それから

それから

1985年11月9日(土)公開
OFFICIAL SITE

Introduction

「僕の存在には貴方が必要だ」 「……残酷だわ」  高等遊民を自認する長井代助が永年秘めてきた必死の愛。親友・平岡常次郎の滋である三千代への告白は、友情、そして、彼をとりまく家族や社会との断絶をもたらし、あらゆる意味での破局を予感させた――破拐を愛のたまものを味わう者は、同時に愛の報いをも切実に味わわなければならないのか……。  『それから』は、日本の近代文学を代表する文豪・夏日漱石の恋愛三部作「三四郎」「それから」「門」の一つ、最高傑作と評される同名小説の初の映画化である。  自然の風物が人々とともに匂いたつように生きていた明治後期の東京を舞台に、破綻を予期しながらも突き進んだ愛の運命を現代感覚の映像に表現。監督は森田芳光、主演は松田優作。『家族ゲーム』で昭和58年度のあらゆる映両賞を席巻し、世界の映画界から“次代を担う重要な若い才能”と注目されたグランプリ・コンビが、永遠の国民文学に真正面から挑んだ話題の文芸大作である。 現代人の原型(オリジナル)こそ代助。 漱石文学のそれから  原作「それから」は、明治42年6月から10月にかけて朝日新開に連載された漱石の円熟期の作品。「吾輩は猫である」「坊ちゃん」「こころ」とともに人気の高い「三四郎」の続編をなす恋愛小説である。“三四郎の失恋は七分通り境遇に支配されていた。「それから」の代助の失恋は代助の意志により起っている。個性の力を主とされた作品で、漱石の内でも最も深く大きいもののように自分は思っている〟(武者小路実篤)など識者の評価も高い。ことに、古い伝統の中で自我の確立について悩んでいた当時の青年達にはは凄まじいインパクトを与えた作品である。たとえば、主人公・長井代助のキャラクターについて、“我々と前後した年齢の人々には、漱石先生の「それから」に動かされた者が多いらしい。その動かされたという中でも、自分が書きたいのは、あの小説の主人公・長井代肋の性格に惚れこんだ人々のことである。その人々の中には惚れこんだどころか、自ら代助を気どった人も少なくなかったことと思う”と芥川龍之介も書き、そのキャラクターの豊かな創造力と文学の理想について言及している。いわば長井代助は近代人、現代人の性格の原型とも言えよう。劇的な三角関係を軸に恋愛の神秘を探り、一方で人間のエゴイズムに鋭く迫った、漱石の文学世界が最も色濃く出ている作品である。 監督:森田芳光&主演:松田優作。 『家族ゲーム』を超えるそれから  この文学界最高峰の古典に挑んだのが日本映画界の最先端を走る才能コンビ、監督森田芳光と主演松田優作である。  『家族ゲーム』以後、59年『ときめきに死す』『メイン・テーマ』と一作ごとに先鋭な感性に磨きをかけてきた森田演出が、一転して日本のクラシック世界にチャレンジした。そして『家族ゲーム』に次いですぐ『探偵物語』でも大ヒットを飛ばしながらも、以後じっくりと好企画にめぐり逢うまで待ち続けたというス-パースター・松田優作が貯めこんだエネルギーをこの一作に噴出させる……“最高に官能的な大人の世界をテンション高く描いてみた”――なんとなく物騒な予感をはらむ、映画ファン必見の力作が什上がった。  共演は、三千代役にNHKの朝の連続ドラマ「心はいつもラムネ色」で広範な人気を集めた藤谷美和子。平岡常次郎には映画『風の歌を聴け』『湾岸道路』、TV「ふぞろいの林檎たち」、そしてCMでも人気の小林薫が扮する。さらに、代肋の父に大ベテラン・笠智衆、兄・誠吾に中村嘉律雄、誠吾の妻に草笛光子、三千代の兄に風間杜夫、ほか羽賀研二、美保純、森尾由美、イッセー尾形ら、豪華な中にも個性豊かな演技を堪能出来る布陣となっている。  脚本は新進気鋭の女性ライター・筒井ともみ、撮影は『家族ゲーム』『お葬式』の前田米造、美術に今村力をはじめ、力量あるスタッフが揃った。音楽は、松田優作のレコード、コンサート活動も手掛けている梅林茂が担当(オリジナル・サウンドトラック盤、LP・シングル共、ビクター・レコードより10月5日発売予定)。さらに、サントリ―“ランボー”、セイコーハイブリッド等CM界で大活躍のスタイリスト・北村道子も加わり、新鮮で、ユニークで、ファッショナブルな明治が映像化されている。

Story

――明治四十二年・春  実業家・長井得の次男代肋は、三十歳になってもあえて定職をもつことを嫌い、小説を読んだり芝居を観たりすることで日々を過ごす、実生活に根を持たない思索家であった。しかし、生活費に困ることはなかった。父や、その父の事業を継いでいる兄・誠吾の援肋を受け、老婢と書生を置いて、小さいながらも別宅を構えていた。 父や兄は、事あるごとに代肋に対して、何か世に為すことをしろ、そのためにもまず身を固めろと説き、縁談を持ちこむが、代肋は一向にその気を見せない。そんな代肋を兄嫁の梅子は好ましく見守り、子供達の縫と誠太郎は慕っていた。  ある朝、代助に親友・平岡常次郎からの便りが届く。平岡は代助と違って大学を出るとすぐに銀行に就職し、地方の支店に勤務していたが、部下が引き起こした問題の責を負って職を辞し、束京へ戻るというのだ。  平岡との三年ぶりの再会はまた、彼の妻・三千代との再会を意味していた。  かつて大学時代、代助は秘かに三千代に対して想いを寄せていたが、平岡も三千代に強く惹かれていることを告白された彼は、自らの義侠心にのっとった友情でもって、三千代を平岡に嫁がせたのであった。  上京した平岡は明らかに変わっていた。平岡の二年間の社会生活は、代肋にしてみれば身を貶めたことにしか過ぎない。代助は、働くなら生活以上の働きでなくては名誉にならぬ、あらゆる神聖な労力はパンを食らうことから離れ、物好きにやる働きでなくてはならぬという考えを持っていた。しかし、平岡にとつては、それは世に出たことのない男の意見であり、平岡は代助を「坊ちゃん」だと非難するが、その反面で代助に就職を依頼したりする。 一方、三千代も生活のやつれを見せてはいたが、三年の歳月が彼女を娘から女に変え、しっとりとした美しさを備えるようになっていた。この夫婦の上京は、代助の心の中に恐れにも似た不安をひろげ、精神の激動を予感させた。 ――春の深まりから梅雨へ  平岡の就職依頼から住居の手配、果ては借金の口ききまで代助は奔走し、そのため生まれて初めて兄にも頭を下げた。それは平岡のためというよりむしろ三千代のためであった。 三千代と平岡が結ばれることになった時、代助は親友・平岡のために喜びの涙を流した過去があった。しかし、それは青年期特有の義侠心の発露であり、自然の真情ではなかったことが、歳月を経るに従って明らかになった。幾度か三千代と会うたびに代助の想いは募り、彼を苦しめた。だが、三千代はいま、平岡のなのである。  三千代もまた学年時代から代助を愛していたのだ。秘かに愛していた代助の勧めに従って彼女は平岡の許に嫁いだ。そして、彼女の代助に対する気持ちもまた、三年の歳月を経ても変わってはいなかった……。 それからの夏  代助の父と兄は自分達が望む縁談を強引に進め、代助に承諾させようとしていた。それは長井家にとつてゆかりの深い相手との緑談であり、財産家である彼らとつながることは自らの事業を豊かにするためにも必要だったのだ。令嬢との見合いを経て、食事会とことは順調に進展し、追いこまれつつあった代助は、 ついに自らの本心を三千代に打ち明ける決意をする。 「昔の自然に今、帰るのだ」――しかし、それが自然の情念に基づいた恋愛であっても、ふたりが強引に突き進めば、家名も友情も、あらゆるものが犠牲になるのは明白であった。 「覚悟をきめましょう」――それでもなお、社会に背く愛に向って代助も三千代も走り出そうとしていた。  そして、それから――。

Credit

監督:森田芳光 製作:藤峰貞利(古澤利夫)、黒澤満 脚本:筒井ともみ 撮影:前田米造 美術:今村力 音楽:梅林茂 出演:松田優作、藤谷美和子、小林薫、美保純、森尾由美、イッセー尾形、羽賀健二、笠智衆、川上麻衣子、遠藤京子、泉じゅん、一の宮あつ子、草笛光子、風間杜夫、中村嘉葎雄 企画:サンダンス・カンパニー 配給:東映 <受賞リスト/1985年度> ■山路ふみ子賞 ■報知映画賞 最優秀作品賞・最優秀監督賞(森田芳光) ■毎日映画コンクール 日本映画優秀賞・撮影賞(前田米造)・音楽賞(梅林茂)・録音賞(橋本文雄・宮本久幸)・美術賞(今村力) ■日本映画ペンクラブ賞 ベストワン(日本映画部門) ■ヨコハマ映画祭 音楽賞(梅林茂) ■キネマ旬報賞 日本映画ベスト・テン第1位・日本映画監督賞(森田芳光)・日本映画脚本賞(筒井ともみ)・助演男優賞(小林薫) ■ブルーリボン賞 スタッフ賞 ■日本アカデミー賞 優秀作品賞・優秀監督賞(森田芳光)・優秀脚本賞(筒井ともみ)・優秀主演男優賞(松田優作)・優秀助演男優賞(小林薫)・最優秀助演男優賞(小林薫)・優秀撮影賞(前田米造)・最優秀撮影賞(前田米造)・優秀照明賞(矢部一男)・最優秀照明賞(矢部一男)・優秀録音賞(橋本文雄・宮本久幸)・最優秀録音賞(橋本文雄・宮本久幸)・優秀美術賞(今村力)・優秀音楽賞(梅林茂) ■映画ポスタースチールコンテスト 日本映画第1位 ■予告編コンクール 銀賞 ■くまもと映画祭 スタッフ賞 ■おおさか映画祭 音楽賞(梅林茂) ■日本映画テレビ技術協会賞 技術賞 ■日本映画照明協会 特別賞 ■文化庁芸術作品賞 ■文化庁優秀映画製作奨励金交付作品 ■藤本真澄賞奨励賞(黒澤満・藤峰貞利) 以上38の賞を受賞

ARCHIVES

宣伝作品

    企画・製作・宣伝作品

    Secured By miniOrange